最終下校時刻ギリギリに練習が終わった。


すでに日が落ちて、外は暗い。


今夜は満月だ。


金とも銀ともいえない輝きが空に懸かっている。



帰り支度を終えた小夜子が、軽音部室の真ん中で、凛とした声をあげた。



「家のそばまで送ってください」



文徳《ふみのり》先輩が動きを止めて、小夜子を見た。


小夜子は繰り返した。



【家のそばまで送ってもらいたいんです。煥さんにお願いします】



文徳先輩は突然、めまいに襲われたようにふらついて、煥《あきら》先輩が慌てて支えた。


文徳先輩はすぐに体勢を立て直して、煥先輩に告げた。



「鈴蘭さんと小夜子さんを送っていけ」


「兄貴は?」


「おれは予定どおり、楽器店に寄ってから帰る。ギターの弦のストックが切れた」