ーーチーン……
『1階です』という機械的なアナウンスと同時に、ゆっくりと扉が開く。俺はそのまま何も考えずに一歩外へ出た。
足元に広がるロビーの落ち着いた照明と、少しだけ静かな空気。
その中で、ふと隣を見ると、小さな足取りでちょこちょことついてくる石原さんの姿があった。
その様子がなんだか可愛くて、さっきまで無意識に締まっていた頬が自然と緩む。
あー、俺、本当に惚れてるんだな。
こんな風に誰かの仕草一つで気持ちが動くなんて、今までなかった。初めてだ、こんな感情になったのは。
「今井くん、ありがとう」
少し遠慮がちに、それでもちゃんと聞こえる声でそう言われる。
「何が」
「一緒に来てくれてさ」
その言葉に、横目でちらっと見ると、石原さんの横顔がほんのり赤い。
照れてるのか、温泉のせいなのか、分からないけど、なんとなく分かる気がする。
「なに?照れてるの?」
「そんなんじゃないもん!!」
勢いよく否定するけど、その言い方がもう照れてる証拠みたいなもんだ。
「で?何が欲しいの?」
「あ!えっとね、オレンジジュースと、りんごと……あとこれと……ーー」
石原さんが冷蔵ケースの前で指をさしながら、次々と欲しいものを言っていく。その一つ一つを、俺は無言で手に取っていく。
そんなやり取りが妙に自然で、少しだけくすぐったい気持ちになる。


