【大幅加筆】クール男子の取扱説明書





「キャー!!可愛い!!」



水族館に入った途端、石原さんは目に入るものすべてに反応するみたいに声を上げて走り回る。色とりどりの魚たち、ゆらゆらと泳ぐクラゲ、水槽の中でゆっくりと動く生き物たち。その一つ一つに全力で感動している姿は、見ていて飽きない。


……飽きないけど。



「石原さんさ、俺の存在忘れてない?」



少し離れた場所から声をかけると、石原さんはハッとしたように振り返った。



「……忘れてないよ!!」



一拍置いてからのその返事に、ため息が出そうになる。絶対今、一瞬忘れてただろ。



「石原さんが楽しいならいいけど」



でも――



「今井くん」



すぐに名前を呼ばれて、顔を上げる。さっきまで水槽に夢中だったはずの石原さんが、真っ直ぐ俺を見ていた。



「どうしたの」


「私、今井くんを好きになって良かったと思ってる」


「え?」


「もし、今井くんが私を振ったとしても……後悔はしないよ。それでも私は今井くんのことが大好きで、諦められそうにないから」



迷いのない声だった。逃げ道なんて最初から用意していないみたいに、ただまっすぐに気持ちをぶつけてくる。



「往生際が悪いね」



軽く返したつもりなのに、自分の声が少しだけ震えていた気がする。

こんなふうに、誰かにここまで真っ直ぐに気持ちを向けられたことが、今までにあっただろうか。