Ri.Night Ⅲ



「彼方!壱!待って!」


嬉しそうに彼方達の元へ走っていく陽を見て、フッと笑みを零す俺。


沈んだり上がったり忙しい奴だな。




「罠だと、思うか?」


陽に目を向けたまま、隣に居る十夜にそう問い掛ける。


「……分からねぇ」


「まぁ、罠だとしても行くしかねぇよな。あの男は“F市”って言ってた。もしかしたら本当に凛音が居るのかもしれねぇぞ」


「……そうだな」



何を考えているのか全く読めない返事に振り向くと……。



「十夜!!」



振り向いた瞬間、十夜の身体がグラリと前へ傾いた。


慌てて腕を伸ばし、受け止める。



「……っ大丈夫だ」


「十夜っ!」


受け止めた俺の手を左手で制し、何事もなかったかのようにドアへと歩いていく十夜。



……馬鹿が。何が大丈夫なんだよ。


グッと唇を噛み締め、拳を握り締める。




凛音が居なくなって一番ショックなのは陽だと言ったけど、今の十夜を見て思った。


一番ショックだったのは十夜かもしれないと。


友情と恋愛感情を比べるつもりはないが、恋愛感情があるのとないのとでは全然違うと思う。


愛する人が居なくなった哀しみは“友情の愛”だけの俺等より遥かに強いだろう。


その証拠に、十夜はあれからあまり食事をしていない。


今までもそんなに食べる方ではなかったが、前よりも明らかに食べる量が減った。


顔色も悪いし、きっと睡眠も十分に取っていないんだと思う。


このままでは確実に身体を壊す。


どうにかしたいけど、俺達ではどうする事も出来ない。



「凛音……」



お前にしか十夜を元気にする事が出来ねぇんだよ。



「……早く帰って来いよ。馬鹿凛音」