「分かった。今から向かう」
『待ってるよ。鳳皇の皆さん』
クスクスと愉快げに笑った男はそれだけ言うとアッサリと電話を切った。
プープーと室内に響く機械音。
俺達はそれを無言で聞いていた。
まだ、あの男の笑い声が耳に残っている気がして。
「行くのか?」
「……行くしかないよね」
彼方の問い掛けに答えたのは壱で。
壱は重苦しい雰囲気の中ゆっくりと動き出し、テーブルの上にある車の鍵を手に取った。
それが合図かのように彼方も動き出す。
「十夜、俺……」
唯一そこから動かなかったのは陽だった。
陽はその場で突っ立ったまま口ごもり、十夜の顔をチラッと見て直ぐに顔を逸らした。
下唇を強く噛み締めているのが見ると、陽は今、不安なんだろう。
俺がさっき“凛音を捜しに行くな”と言ったから。
きっと連れて行って貰えないと思っているんだ。
それが悔しくて哀しくて。
一緒に行きたいという想いを我慢しているんだろう。
「──陽」
十夜の声に陽が顔を上げる。
「お前を置いて行かない。アイツを迎えに行く時は五人揃ってだ」
「……っ、十夜!」
十夜のその言葉にパァと満面の笑みを浮かべた陽。
余程嬉しいのか、半泣きになりながら十夜に抱き着いている。
十夜はそんな陽に呆れた顔をしているが、その口元には小さな笑みが浮かべられていた。


