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あれから貴兄と優音と合流して、繁華街からバイクで十分程走った所にある獅鷹の溜まり場へとやって来た。


貴兄にバイクから降ろして貰い、ほぼ半年ぶりとなる獅鷹の倉庫を見上げる。



そんなに似ている外観ではないのに、動悸が激しくなるのは何故なんだろう。


やっぱり“倉庫”だから?


来る前から覚悟はしていたけど、実際その場に立つと平静が保てない。




心が……身体がまだ覚えてる。


同じ倉庫じゃないのに、そのよく似た外観と纏う雰囲気が“あの場所”だと錯覚させた。


少しずつ、少しずつ、閉じ込めたばかりの感情が滲み出ていく。



「……っ」



思い出すのは、皆の笑顔。


そして、

もう戻ることのないあの場所。







「凛音?」


『え?あ、あぁ、ごめん』


貴兄の声にハッと意識が戻る。


貴兄に目を向けると、心配そうな表情であたしを見つめていた。


貴兄だけじゃない。


優音も同じ様な表情であたしを見ている。


「大丈夫か?」


少しだけ身を屈めた貴兄が、あたしを覗き込みながらいつもの様に頭を優しく撫でてくれる。


その手が心地好くて。


『ん?何が?大丈夫だよ。ほら、早く行こ!』


いつもの声に戻し、貴兄の腕を引っ張って先に駆け出した。


「オ、オイ、リン!」





……あたしの馬鹿。


二人にあんな顔させないってあれほど誓ったじゃない。



あたしは、“リン”。

“凛音”じゃない。


“ここ”に“凛音”は存在しないんだ。


だから、凛音の想いは表に出しちゃいけない。




そう心に誓っていても、身体は“全て”を覚えているんだと、この後身を持って思い知らされた。



所詮あたしはどんな姿をしていても“凛音”なんだと──……