「──待たせたな」
隙間から離れ、身を潜めていると、突然聞こえた男の声。
びっ、くりした……。
直ぐ様二人の方へ視線を戻すと、誰かが向かい側のソファーへと腰を下ろしているところだった。
それを見て思わず心の中で舌打ちする。
もう少し早ければ相手の顔が見えたかもしれないのに。
かろうじて右半身は見えているけど、肝心の顔が貴兄の身体に隠れていて見えない。
……あの男は誰なんだろう?
あの男に会うのが貴兄の言ってた用事?
沸き上がる疑問に比例して眉間にシワが寄っていく。
「──まぁ、座れよ」
………え?
言い放たれた男の声に違和感を感じた。
なんで……?
まるでその疑問に応えるかの様に動き出した貴兄と優音。
「……ぁ…」
二人が動き出した瞬間、あたしは即座に両手を口元へと添え、目を見開いた。
足がふらりと後ろへよろける。
なん、で……?
唇がガタガタと震えだす。
普通に考えたら、絶対のそこに居る筈のない人。
貴兄と一緒に居るなんて想像もつかない人。
アイツが貴兄と一緒に居るなんて、そんな事絶対信じたくない。
……だけど、何度姿を確認してもそこに居るのはアイツで。
あたしの見間違いなんかじゃなかった。
ソファーへと腰を下ろした貴兄と優音のちょうど狭間。
いつ見ても胡散臭い笑みを向けている“アイツ”。
“中田”
貴兄の目の前に居るのは、正真正銘bladeの総長、中田だった。


