「次は離してやれねぇからな」


十夜は切なげにそう一言溢すと、あたしから手を離してトンッと肩を軽く押してきた。



「行け」



十夜……。


あたしを見つめる十夜の表情は見ていられない程哀しげで。

放たれた声は小さくも力強く感じた。



十夜の表情に、その声に、足が思うように動かない。


けど、これ以上一緒にいると本当に離れたくなくなってしまうから。



「……うん」


あたしは小さく頷いて、その場から力一杯走り出した。




もう、振り返らない。

立ち止まりもしない。


自分の為に。

十夜の為に。


いつかまた逢える事を信じて。

一緒に居られる事を信じて。


あたしは前へ突き進む。


夢見る明日に向かって。

獅鷹と鳳皇が和解する未来に向かって。



前へ進む。




十夜、ありがとう。


本当に本当にありがとう。



「──大好き」



十夜への想いは流れる涙と共に宙を舞い、儚く空へと消えていく。


いつか、逢える日まで。


いつか、直接伝える日が来るまで。



この言葉とも、さようなら。





「十夜、大好き──」