「──凛音」
甘い空気に一人浸っていると、十夜が再びあたしを呼んだ。
その呼び掛けに返事をしようとした時。
「余計な事はするなよ」
「……うん……って、えっ!?」
頭上からさっきの声とは天と地ほどの差がありそうな低音ボイスが降ってきた。
……は?え?余計な事?
十夜の言っている意味が全く分からず、あたしはただポカーンと見上げてるだけ。
え?何?一体どういう──
「お前、絶対兄貴に探り入れるだろ」
「え゙……」
突然、真っ正面から図星を突かれた。
「そ、そんな事は……」
……あるかも。
空けていた口は閉じたものの、今度は頬がヒクヒクと引き攣る。
「お前、頼むから何もするなよ。お前が入ると余計に拗れる」
「……ヴッ」
な、何で分かったんだろう。あたしが探りを入れようとしていること。
いや、探りっていうか、やっぱりあたしも鳳皇と獅鷹の間にあった事を知っとかなきゃいけないかなと思って。
でも、流石のあたしでも直接貴兄に探りを入れようなんてそんな大それた事をしようとは思わない。
慎か獅鷹の下っ端くん達にそれとなく聞いてみようかなと思っただけ。
貴兄にはあたしと鳳皇が関わって欲しくない理由が二つある。
一つ目はあたしが暴走族と関わって喧嘩に巻き込まれると危ないから。
二つ目は鳳皇との間に大きな溝があるから。
あたしが今まで特に重要視してきたのは二つ目だ。
あたしが鳳皇と関わると両チームの間に争いが起き、更に溝が深くなる。
だからあたしは鳳皇との関わりをスッパリと断ち切ろうと思ったんだ。


