「………十夜……」
しがみつく様に十夜の服をギュッと握り締めると、十夜はあたしの言葉を遮る様にゆっくりと身体を離した。
滑り落ちた十夜の手はそのままあたしの右手をすくい取り、指を絡める。
何度されても慣れないその仕種。
無意識に手が震える。
それを感じ取ったのか、十夜は絡ませていた指を解くと、あたしの手を優しく包み込んだ。
心臓の音が脳天まで響いて物凄くうるさい。
だけど、その音にも次第に慣れていき、それが心地良いとさえ感じてきた。
「──直ぐにカタをつける」
静かな公園に十夜の消え入りそうな声が響く。
返事をする代わりに真っ直ぐ十夜を見つめると、その漆黒の瞳に自分の姿が映っていた。
情けない顔をしている事は重々承知していたけど、まさかこれ程酷いとは思わなくて。
十夜が心配するのは当然だと思った。
ホント情けない……。
グッと唇を噛み締め、感情を静めようと小さく息を吐く。
いつまでも哀しい顔をしてたら駄目だ。
これは哀しい別れなんかじゃない。
逢えないのは寂しいけど、いつか、いつかまた逢える日が来る。
もう逢えないと思っていた今までの別れとは違うんだ。
あたし達には明るい未来が待っている。
『信じていればいつか叶う。そう思っているだけで前向きになれるんだよ』
──ねぇ。おじさんそうだよね……?


