夕方と言えど季節は真夏。

密着すると物凄く暑い。


けど、今はそんな事どうでもよかった。


今はただ、十夜と離れたくないという想いの方が大きくて。


この腕を離したくない。十夜と離れたくない。


あたしの中にはその想いしかなかった。



この腕を離せば、十夜とお別れしなきゃいけなくなる。一緒にはいられなくなる。


それが、堪らなく嫌だった。


だけど───


「凛音」


いつかは離れなきゃいけない。


「……うん」


ずっと、このままじゃいられない。


だから、嫌でもこの腕を離さなきゃいけない。


名残惜しむ様に、ゆっくりと十夜の首から両腕を離すと、少しづつ離れていく十夜の温もり。


それに比例して、苦しい程の切なさと泣きたくなる程の寂しさが募っていく。


今のあたし、きっと酷い顔してる。


こんな顔、十夜には見せたくない。見せられない。


だから、身体が離れていく間ずっと俯いて顔を隠した。


もちろん、離れてしまった今も。



「………」

「………」


二人の間に流れる気まずい空気。


やっぱり、十夜の顔見れない。

笑顔でお別れなんて絶対出来ない。



「凛音……」


……十夜の顔を見てバイバイなんて言えないよ。