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送って貰ったのは、以前、十夜と別れた公園だった。


此処から家まで歩いて約10分。


本当は、あまりいい想い出のないこの公園には送って貰いたくなかったけど、土地勘のない十夜が分かるのは此処しかなかった。




「──来い」


あたしに向けて大きく広げられた両手。


それを見たあたしはコクンと小さく頷き、そっと手を伸ばす。


ゆっくりと前へと傾いていく身体。


十夜の香りが鼻先を掠めたかと思うと、直ぐに温もりが伝わってきて。

その温もりがあたしの心を揺るがせた。


もうすぐ離れなきゃいけない。


そう思うだけで寂しさが募っていって。


あたしはその寂しさを掻き消す為、十夜の首へと両腕を巻き付けた。



「凛音……」


地面へと下ろしたにも関わらず、ギュッと強く抱き締め返してくれる十夜。


耳元で聞こえる甘い声に胸の奥がキュンと疼く。


「十夜……」


背中をなぞる様にして下りていく十夜の腕は止まることなくそのままあたしの腰をグッと引き寄せて、更に二人の距離を縮めた。