……おじさん。


その穏やかな表情に隠された意図に気付いて、頬が緩んだ。




「──十夜」



おじさんに向けて小さく呟き、微笑む。



「彼の名前は、“桐谷 十夜”だよ!」



あたしの、好きな人の名前。


大好きな人の名前。




「桐谷 十夜くんか。良い名前だね」



おじさん、ありがとう。



「今度来る時は二人でおいで」



本当に、ありがとう。


最後の最後までその穏やかな微笑みを絶やさずにいてくれたおじさんに力一杯手を振って、ドアを開ける。


ドアを開け、閉めるその時まで、感謝しきれない程の想いをおじさんに伝えた。



おじさん、本当にありがとう。


おじさんのお陰で十夜への想いがより一層強くなった気がするよ。



「……遅ぇ」


「……ごめん。十夜、ごめんね。……ありがとう」



おじさん、次来る時は十夜と一緒に来るからね。