「……おじさん、ありがとう」


言葉だけじゃ言い表せない程の感謝を、おじさんにギュッと抱きついて伝える。


そんなあたしにおじさんは「こらこら凛音ちゃん!」と声を上擦らせてあたふたしたけど、離れた時にはいつもと変わらない優しい笑顔を向けてくれた。



「凛音ちゃん、幸せになるんだよ」



そう言って、おじさんがくれたのは棒つきの飴。


「うん!おじさんも幸せになってね」


その飴を受け取って、「ありがとう!」とお礼を言う。



おじさんがくれたのはピンク色のハート型の飴だった。


寄り添うように二つ並んだその飴を見ると、なんだかおじさんが『頑張れ』と応援してくれているような気がして、嬉しくなる。




「ほら、早く行きなさい。彼が待ってるよ」


「うん。おじさん本当にありがとう!」


おじさんに手を振って、踵を返す。



「あ、凛音ちゃん、ちょっと待って!」


「……へ?」


ドアノブに手を掛けようとした瞬間、おじさんに引き止められて振り返ると。



「彼の名前を教えてくれるかい?」



穏やかな笑みを浮かべたおじさんがそう問い掛けてきた。


……名前?


突然の質問に思わずキョトンと目を見開く。


そんなあたしとは反対に、おじさんの表情は笑顔のまま。