知らなかった十夜の想い。
知らなかったこの一週間の出来事。
真夏の日中。
それは並大抵の暑さではなかっただろう。
おじさんの言葉を思い出す度、胸の奥が締め付けられる。
きっと、待っていてくれた十夜の痛みはこんなものではなかったはずだ。
何時間という孤独の中、不安と哀しみに苛まれ、そして闘っていた。
それを考えただけでどうしようもなく胸が痛んだ。
あたしはその間何をしてた?
何を想っていた?
十夜の想いを知らなかったとはいえ、あたしは自分と遊大の事ばかり考えていた。
十夜が暑い中あたしを待っていてくれてた時、あたしは自分の事しか考えてなかった。
自分の事しか、考えてなかったんだ。
「……凛音ちゃん、君達に何があったのかは、おじさんには分からない。
けどね、自分の気持ちにはいつも正直でいなさい。信じていればいつか叶う。そう思っているだけで前向きになれるんだよ」
「……はい」
「凛音ちゃんを好きなのは彼だけじゃない。“他の子達”もみんな凛音ちゃんの事が大好きで、凛音ちゃんの味方だと思う」
もちろんおじさんもね。
そう言って目尻を下げてにっこりと微笑んだおじさん。
その表情は少しだけ照れているようにも見えた。