「……おじさん?」
管理人室に入ったおじさんは特に何かをする訳でもなく、ただあたしを見て微笑んでいるだけ。
そんなおじさんを不思議に思いながら首を傾げる。
“いい物”って言ってたからてっきり何かくれるものだと思っていたのに。
おじさん、何がしたいんだろう?
「凛音ちゃんに“いい物”………と言うより“いい事”を教えてあげようかな」
突然意味深な事を言い始めてたおじさんに更に訳が分からなくなった。
いい事って何?
「──彼ね、ずっと待ってたんだよ」
「……ずっと、待ってた?」
おじさんの言葉を反芻させると、笑顔のままコクンと頷くおじさん。
「ちょうど一週間ぐらい前だったかな。最初に彼を見たのは」
「……え?」
管理人室のドアへと視線を流すおじさんにつられて、あたしもドアを見つめる。
彼……って十夜?
おじさんの視線から察するに、“彼”というのはきっと十夜の事。
「……彼ね、毎日駐輪場に居たんだ。玄関が見える位置で、朝から晩までずっと玄関を見てた」
……え?玄関を見てた?
その時の光景を思い出しているのか、おじさんの表情は穏やかだけどどこか哀しそうで。
自然と眉根が寄っていく。
十夜が、毎日此処へ来てたの……?
「彼を見た時、すぐに凛音ちゃんの友達だと分かったよ。朝、毎日迎えに来ていただろう?」
「……うん」


