「で、でも、それだったら、あたしがいつ此処へ来るか分からないじゃない!」
そうだよ。準備に来る事が分かっていても、あたしがいつ此処へ来るかは分からない。
なのに、十夜はまるであたしが今日此処へ来る事を知っていたかの様に待ちぶせしていた。
「なんであんなにタイミングよくあそこに居た──」
「凛音ちゃん?」
「………へ?」
突然聞こえた声に言葉を詰まらせて、声が聞こえた方へと振り向く。
すると、
「おじさん!?」
そこに居たのは、ヒラヒラと手を振っている管理人のおじさんだった。
「おじさん!」
手を振り返しながら、おじさんの元へ小走りで駆け寄っていく。
「今から帰るのかい?」
「うん!」
来た時と変わらず、にっこりと優しい微笑みを向けてくれるおじさんに微笑み返す。
「そうか……」
終始にこにこ笑顔なおじさんは笑顔のままあたしから視線を上げると、あたしの後方をジッと見た。
……え?なに?
おじさんの視線の先。
それはつまりあたしの後ろで。
けど、そこには十夜しかいない。
確かおじさんは十夜と面識ない筈だけど……。
「おじさん?」
「良かったね。……それと、ちゃんと消しといたから安心しなさい」
「……ありがとうございました」
……え?なに?どういう事?
おじさんが十夜ににっこりと穏やかに微笑み、それに対して十夜が軽く頭を下げている。
意味の分からない二人のやり取りにあたしは、一人ポカンと口を開けて置いてけぼり。
……意味、分かんないんですけど……。
「凛音ちゃん」
「へ?」
「いい物あげるからこっち来なさい」
「いい物?」
チョイチョイと手招きするおじさんに首を傾げて、十夜に「ちょっと待ってて」と言っておじさんの後ろを着いて行く。


