「……ありがと」
答えを聞く前に十夜が外階段とエントランスを繋ぐ扉を開けてくれて、先に中へと入る。
「……あの時、」
バタンと扉が閉まる音と同時に、背後から聞こえてきた十夜の声。
十夜が歩き出すのを見て、自分も並んで歩き始める。
「薬局で会ったあの時、お前買い物袋落としていったろ」
「買い物袋?」
十夜の言葉に小さく首を傾げる。
「ガムテープの入った」
「………あ!」
そう言えばあの時、ガムテープ落としたんだったっけ。
「それが?」
「あの場所にいたお前と、買い物袋に入ったガムテープ。その二つを繋ぎ合わせればすぐに答えが出た。
お前が、引っ越しの準備をしに来てたって事がな」
「……あ」
なるほど。
「ガムテープを買ったという事はまだ引っ越しの準備が終わってないって事だろ。だから、此処へ来た」
「………」
十夜は大した事ではないとでも言いたげにさらりとそう言って退けたけど、あたしにとっては物凄く驚く事で。
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だと思った。
まさかガムテープが原因だったなんて。
確かに、ガムテープなんて持ってたら引っ越しの準備をしに来てますって教えた様なモンだよね。


