「………へ?」
ぼそりと呟かれた言葉に素頓狂な声が出るあたし。
そんなあたしにちらりと目を向けた十夜は、清ました顔で「送る」と言って、またもやあたしを放って先に階段を下りていってしまった。
「………え?」
ちょっと待って。今、なんて言った……?
え、聞き間違い?
いや、今、確かに『他の男の名前読んでんじゃねぇ』って言った……よね?
え、あの十夜が?
まさか、ヤキモチ!?
年中クールな十夜のまさかのヤキモチに、ポッと顔が赤らむ。
何!?何なの!?
今日の十夜変!!絶対変!!
いつもの十夜じゃない!!
も、もしかしてこれ、夢だったりする?
「──何してんだよ。置いてくぞ」
なんて思っていたら、十夜の呆れた声が聞こえてきて。
その声に顔を上げると、ちょうど折り返し地点に差し掛かった十夜が横目であたしを見ていた。
目が合った瞬間、行くぞとでも言うように顎で促され、慌てて階段を駆け下りる。
「……ねぇ、一つだけ聞いていい?」
階段を下りながら恐る恐るそう問いかけると、返事の代わりに視線が向けられた。
「なんであたしが此処へ来る事知ってたの?」
それは十夜に追いかけられていた時からずっと疑問に思っていたこと。
なんであたしが此処にいると知っていたのか。
あたしは貴兄にさえ此処へ来る事を言っていないのに。
それなのに、こんなにタイミング良く現れるなんてどう考えてもおかしすぎる。


