「やっと思い出したか。……それで?」
「そ、それでとは?」
俯いた顔を無理矢理上げさせられたかと思うと、ニヒルな笑みを浮かべた十夜に更に返答を求められた。
それでも何も、何の事を言っているのかさっぱり分からないあたしには十夜の求めている答えなんて返せる訳がなく。
「……お前、」
一向に視線を合わせようとしないあたしに痺れを切らせた十夜がゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「次の日には綺麗さっぱり忘れてくれてたよな」
「……うっ」
「お前だったらどう思う?好きだと言われた次の日に忘れられてるのって」
「………」
さ、さっきの甘い雰囲気は何処(いずこ)へ……?
そう言いたくなる程頭上から浴びせられる言葉と視線がチクチクと痛い。
い、いや、あれはしょうがなくない?
だってアルコール入ってたし。
そうだよ、ビールのせいだよ。うん。ビールのせいだ。
自分が素面じゃいられないからという理由で飲んだのに、都合が悪くなるとビールのせいにする自分勝手なあたし。
そんなあたしを、
「ビールのせいにすんなよ?」
十夜の言葉が一蹴した。
威圧的なその言葉に最早言い返す術はなく。
「ご、ごめんなさい」
素直に謝るしかなかった。
俯いたまま膝の上でグッと両手を握り締めていると、
「なっ……!?」
突然後頭部に手が回され、グイッと胸元へと引き寄せられた。
「ここまで焦らされた仕返しだ」
「へ……?」
「そんなに気にしてねぇからそんな顔すんな」
少し荒々しかったその仕種とは反対に、落ちてきた声は思いの外優しくて。
落ち着いていた鼓動が急激に速くなるのを感じた。


