「だから、お前は何も気にしなくていい」
「……っでも!」
「気にするな。お前はただ俺の話を聞いてただけだ。何も応えていない。俺が一方的に告げただけ」
「十夜……っ」
頬を撫でていた十夜の親指が、それ以上言うなとでも言うようにあたしの唇に触れる。
その指に遮られた唇は当然閉じるしかなくて。
代わりにどうして?と目で訴えた。
そんなあたしの視線にも十夜はただ小さく首を振るだけ。
その仕種に涙が溢れ、ギュッと手を握りしめた。
……十夜。
なんで、なんでそんなに優しいの?
なんであたしの罪悪感まで背負おうとしてくれるの?
優しすぎるよ。
あたしは十夜にそこまでして貰える人間じゃない。
あたしは十夜を何度も傷付けた。
何度も何度も拒絶して、
その度十夜の心に傷を付けた。
そんなあたしを好きだと言ってくれるだけじゃなく、罪悪感まで背負おうとしてくれるなんて。
そんなの……。
「お前の事だから気にするなと言っても気にするんだろうな」
「……十夜」
「俺はお前を苦しめたくない。だけど、これだけは無理だ。どれだけ時間がかかっても、俺はお前を傍に置きたい」
熱く、けれど眉根を寄せて苦しげにあたしを見つめる十夜に視界が揺らぐ。
微かに震えているその声に切なさを感じ、そっと閉じられた瞳に堪えていた涙が零れた。
視線の先には噛み締められた唇。
その唇が痛々しくて。
「十夜……」
気が付けば十夜の唇に指をあてていた。


