十夜の言葉に頬の熱が一気に冷めていく。
「……そんな顔すんな。俺はお前を諦めるつもりなんかない。お前が俺の事を何とも思っていなくても、俺はいずれお前の元へ行っていた」
あたしの顔を見てククッと小さく笑った十夜が、前のようにゆるりと口角を上げ、意地悪い笑みを浮かべる。
そんな十夜につられて唇を尖らせるあたし。
内心は凄く嬉しいのに、それを素直に表に出せない。
そんな自分が堪らなく嫌になる。
ホント、可愛くない女。
「此処へ来ないと言ったのは、まだお前の元へ行ける状態じゃないからだ」
「……え?」
「やらなきゃなんねぇ事があるって言っただろ?全てカタがつくまで、お前に逢ってもどうにも出来ない。だから行かないって言ったんだ。
だけど、お前に気持ちがあると分かった以上、誤解させたまま放ってはおけなかった」
そう言った十夜はあたしの頬を親指で優しく撫でる。
その仕種に少しくすぐったさを感じたけど、それよりも触れられている喜びの方が大きかった。
「此処へ来たのは結局自分の為。お前が一人だったから良かったものの、兄貴が居たら──」
──また、繰り返してた。
十夜はそう呟いてフッと自嘲的な笑みを浮かべる。
その笑顔は今にも壊れてしまいそうな程儚くて。
胸の奥がギュッと締め付けられた。
「十夜……」
無性に十夜を抱き締めたくなった。
抱き締めて、その表情を消してあげたい。
だって、その表情はあたしのせいだから。
あたしがさせてしまった表情だから。


