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「凛音ちゃん、久しぶりだね」


「わぁー!おじさん、こんにちはー!」


オートロックを解除してエントランスを抜けると、管理人室の窓から顔を覗かせてヒラヒラと手を振ってくれるおじさん。


そんなお茶目なおじさんに手を振り返すと、おじさんは身体を引っ込め、管理人室のドアを開けて外に出てきた。


「おじさん久しぶりー!元気にしてた?」


「うーん、毎日凛音ちゃんの顔見てないから元気じゃないかもなー」


「もー相変わらず口が上手いんだからー!」


ニカッと悪戯小僧みたいに歯を見せて笑うおじさんは以前と少しも変わりなくて。何だか嬉しくなった。


「凛音ちゃん、今日は引っ越しの準備かい?」


「……うん、そう」


少し寂しげに表情を曇らせたおじさんにつられて、自分の声色もワントーン沈む。



「そっかぁ……。凛音ちゃんがいなくなると寂しくなるなぁ……」


「おじさん……」


眉尻を下げて本当に寂しそうに笑うおじさんに、寂しさがじんわりと込み上げてくる。


夜こそ居なかったものの、朝はいつも『おはよう。いってらっしゃい』と優しい微笑みで見送ってくれたおじさん。


その笑顔が見れなくなるんだと思うと、やっぱり寂しく感じる。