「リン、一旦離れるか」


『う、うん。そうした方が良さそうだね』


「お前あっちな」


『じゃあ優はあっちね』


お互い行く方向を目で合図し合い、くるりと背中を向けて歩き出す。






『はぁ……』


楽になった。


あのまま二人と一緒に居るとボロが出そうっていうか、女子からの視線が痛くて居づらかったんだよね。


取り敢えず二人と離れる事が出来たし、貴兄達がクラッカー買いに行ってる間にこの辺ブラブラしよーっと。



鼻唄を歌いながら店内を見て回る。



あっ、そう言えばもう少しでマスカラがなくなりそうだったかも。


ド〇キ安いし、買っておこうかな。


思ったらすぐ行動のあたしはくるりと踵を返し、再びエスカレーターに飛び乗る。



確かマスカラは一つ下の階だったような……。


うん、合ってた。


フロアいっぱいに並ぶ沢山の化粧品にニッと笑って、エスカレーターから下りる。


お目当てのマスカラを探そうと辺りを見渡すけれど、人が多すぎてなかなか前に進めない。


よしっ!と意気込んで、人の隙間を縫って進もうとした───その時。



「あの~」


ん?


「すみません、お名前教えて頂けますか~?」


『は?』


突然声を掛けられたと思ったら数人の女の子達に囲まれて。


『ちょ……!?』


許可なく上半身をペタペタ触られた。


は?え?ちょ、何!?

全然意味分かんないんだけど!!