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「──来い」


その呼び掛けにそっと両手を伸ばすと、優音は優しく抱き止めてくれて。

抱き直した後、遊大と並んで玄関へと歩き出した。


甘えるように優音の首元へと顔を埋めると、大丈夫とでも言うようにあたしの背中を優しく擦ってくれる優音。


その優しい仕種に泣きそうになった。



玄関付近まで行くと、優音が開ける前に開いた玄関のドア。


そのドアの音に顔を上げると、玄関から出てきた貴兄と目が合った。


「凛音………来い」


目が合うなり穏やかな口調でそう言ってくれた貴兄に、直ぐ様両腕を伸ばしてその胸に飛び込む。


「貴兄……」


全体重を貴兄に預け、首に腕を回してギュッと抱きつく。


「もう大丈夫だ」


そう言って、まるで子供をあやすようにあたしの頭を優しく撫でてくれる貴兄。


その仕種に堪えていた気持ちが一気に溢れ出した。


「……ぅ……っ、」


「……一緒にいてやれなくてごめんな」


その言葉にフルフルと頭を左右に振り、抱き締める腕の力を強める。



「──貴兄」


「……あぁ、分かってる」



貴兄と遊大のそのやり取りに、あぁ、これから遊大に“あたしと鳳皇の関係”を話すんだと思った。


もう隠しておく事なんて出来ない。


十夜と接触しただけなら未だしも、遥香さんも関わっている事が分かったのだから。


遊大には知る権利がある。


そして、あたしも知らなければいけない。



「遊大、後であたしの部屋に来て」



「……分かった」



──遥香さんの事を。