Ri.Night Ⅲ


「十夜………」


それを破ったのはこの場にそぐわない遥香さんの可愛らしい声。


顔を上げると、不安げな表情で十夜を見ている遥香さんがいて。

十夜に寄り添うようにギュッとしがみついている。


それを見た瞬間、背後で遊大が微かに動いた気がした。



遊大……。


遊大が今、どんな気持ちでいるのかあたしには分かるよ。


きっと、あたしと同じ気持ちだと思うから。



「──離せ」


十夜が遥香さんの手を振り払う。


けど、それは“遥香さん”を振り払った訳じゃない。


「離せ」


優音の腕を掴む為に振り払っただけ。


優音の手を掴んだ十夜が優音を睨み付ける。




「──アンタ、まだ分かんねぇの?」


先に沈黙を破ったのは優音で。

まるでさっきの仕返しと言わんばかりに十夜を睨み付け、唸るように言い放つ。



「コイツを苦しめてんのはアンタだよ」


優、音……。


「そんな奴にコイツを渡す訳にはいかない」


優音の揺らぎないその口調に唇が震えた。


それと同時に固まる決意。



「離して」


「………」


「離して、十夜」


十夜に向けてそう言い放つ。



「優から手を離して」


落とした視線を再び上げ、十夜の瞳を真っ直ぐ見据えた。



「もう、終わったの」


左手で十夜手首を掴み、引き上げる。


すんなり離れた十夜の手は元あった場所へと戻っていき、それを見届けたあたしは再び十夜を見上げた。


揺らぐ漆黒の瞳に映るのは、自分の姿。