Ri.Night Ⅲ


「アイツか?」


ピクン。


その言葉に身体がまた小さく揺れる。


「アイツが、お前に何かしたのか?」


遊大はそれを敏感に感じ取り、ゆっくりと視線を上げた。



……違う。違う違う違う。


何もしてない。何もしてないから。


遊大の胸元をギュッと握り、こっちを向かせようと強く引っ張る。


だけど、遊大の視線は十夜を捉えたまま離そうとはしない。


「遊大、ホント何もないから。ね?行こう」


「馬鹿が。お前の嘘はすぐ分かるんだよ」


ちらりと視線をあたしに戻した遊大が眉を潜め、フッと笑みを零したかと思ったら、


「……っ遊大……!」


あたしの後頭部をグッと引き寄せた。


遊大の温もりが頬に触れる。


「……っ遊大、離して!」

「………」


首を左右に振ってそこから逃れようとするけど、それを阻止するかの様に更にグッと力を込められて。

頭が固定されて思うように力が入らない。



……駄目だよ。

遥香さんが見てる。

遥香さんが見てるんだよ?


こんな事をしたら誤解されてしまうのに……!




「──遊大、しっかり押さえてろ」


「あぁ」


「………っ」



……優、音?


遊大の後方から突如姿を現したのは優音だった。

姿は見えないけど声で分かる。



コツコツと一定のリズムを刻む足音。


その足音はあたし達を通り過ぎ、静かに止まった。



「何回泣かせば気が済む?」