「……遥香、ちゃん?」
遊大の足が止まる。
「遊大……!」
腕をグイッと引っ張るけど、遊大はぴくりとも動かなくて、数メートル先に居る遥香さんを凝視している。
……っなんで、
なんで遊大を呼ぶのっ?
遥香さん、なんで……っ!!
「遥香ちゃんと……お前、桐谷……?」
遊大の声にビクッと身体が震える。
遊大が、十夜に気付いた……。
ということは一緒に居る遥香さんとの関係も勘繰るはず。
……なんで。どうして?
どうして、遊大までこんな想いをしなきゃいけないの?
どうして……。
「凛音?」
頭上に落ちてきたその声に、二度目の震えが襲う。
「どういう事だ?」
「……な、にが?何もないよ?」
そう言って誤魔化すけれど、震える声は何かあったと言っているようなもの。
遊大はあたしと鳳皇の関係を知らないから、今はシラを切るしかない。
十夜との関係をバレる訳にはいかないから。
もしバレたら、遥香さんと遊大の関係が余計に──
「……なら、なんで泣いてる?」
「え?」
「何もないのになんで泣いてるんだよ」
……泣いて、る?
あたしが?
眉を寄せた遊大があたしの左頬をそっと親指でなぞる。
「ぁ……」
その濡れた感触で、今、初めて自分が泣いているという事に気が付いた。


