……なんで、遥香さんなの?
十夜と一緒に居るのが、なんで遊大の“好きな人”なの……?
「………っ、」
駄目だ!!
此処に居ちゃ駄目だ!
今すぐ此処から離れなきゃ!!
じゃないと遊大が二人と会ってしまう。
鳳皇の総長と鳳皇と関係のある遥香さんに。
そんな事になったら……。
そう思った途端、今の今まで動かなった足が動いた。
「凛音!!」
踵を返そうとした瞬間、視界に映った十夜の手。
その手は真っ直ぐあたしへ伸びてきて……。
「ぃやっ!!」
「………っ」
あたしに触れる事なく宙で止まった。
……無意識、だった。
無意識に身を捩り、その手から逃げていた。
触れて欲しくなかったんだ。
遥香さんに触れた手で触れて欲しくなかった。
その手で触れられるときっと何もかもぶちまけてしまう。
“なんで遥香さんが居るのに優しくしたの!?”
“なんであたしを身代わりにしたの!?”
そう言って、十夜を責めてしまう。
そんな事、言いたくない。
言ってしまえば最後、その返事を聞かなくてはいけなくなるから。
十夜の口から肯定の言葉を聞かなくてはいけなくなる。
そんなの無理だ。今のあたしじゃ受け止めきれない。
受けとめられないよ……。
「凛音!!」
だから、逃げる。
十夜の口から本当の事を聞きたくないから。
身代わりだったと、聞きたくないから。


