艶やかな黒髪も、
長身で広い背中も、
気だるそうに立つその姿も。
全てが十夜だという事を指し示していた。
自然と放たれるその威風堂々たるオーラがあたしの心を震わせる。
こんな人、他にいない。
後ろ姿を見ただけでこんなにもあたしの心を掻き乱す人なんか他にいない。
十夜しか、いない。
「ねぇ、十夜は何色がいいと思う?」
棚を見上げながら、十夜に可愛らしくそう問い掛ける女の子。
十夜と同じサラサラな黒髪。
肩甲骨下まで伸びたストレートの髪の毛。
自分と変わらないぐらいの身長。
髪の毛の色こそ違うけど、後ろから見た背格好が自分とよく似ていた。
もしかして……。
その子を見て気付いてしまった。
彼女が“アオイさん”なんだと。
“所詮あの女はアオイさんの身代わりだったんだよ”
あの女達の言葉が脳裏に蘇る。
それを思い出した瞬間、フッと自嘲的な笑みが零れた。
……あぁ、本当だったんだ。
あたしはアオイさんの“身代わり”だった。
そう思いたくはないけれど、アオイさんの姿格好が全てを物語っていたから。
「……っ」
十夜達との想い出が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。
……ねぇ、十夜。
十夜はあたしをアオイさんの身代わりにしてたの?
留学してしまったアオイさんの代わりにあたしを鳳皇に入れたの?
あの優しさは、あの笑顔は、
あたしを通してアオイさんに向けられていたの?


