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「えーと、これはそのまま段ボールに入れたらいっか」



あれから早くも数日が過ぎ、八月も半ば。


そろそろ引っ越しの準備をしなければいけないということで、あたしと優音、そして遊大の三人で一人暮らしをしていたマンションへと荷造りに来た。


正直、あんな事があったからこっちへは戻って来たくはなかったけど、此処に来ないといつまで経っても引っ越しが出来ないから仕方ない。


引っ越しの準備をする事は前々から決まっていたことだし。


でも、まさかこのタイミングで来るとは思わなかったけど。



自分からは引っ越しの事について触れない様にしていたんだけど、昨日、とうとう貴兄から「そろそろ荷造りしてこい」と言われてしまった。


事情を知らない貴兄に行きたくないとは言えず、素直に返事をするしかなくて。


気持ちの整理がつかないままこの地を訪れた。


帰ってもいいと言われたら直ぐにでも帰りたい。


それぐらい此処に居たくなかった。



だって、此処には皆との想い出が沢山あるから。

想い出の品だって沢山ある。


だから、ツライ。

此処に居るのが凄くツライ。






「おま……結構激しいパンツ履いてんなー」


「ちょっ、遊大どこ開けてんのよ!」


人様のクローゼットを許可なく探っている遊大に後ろからバシンと平手をかます。


目を離したらすぐこれだ。

ホント油断出来ない。



「……ッテェー。別にいいじゃねぇかパンツぐらい。小さい頃一緒に風呂入った仲だろうが」


「いつの話してんのよ!いつの話を!」


そんな遠い昔の話を引っ張り出されても、勝手に引き出しの中を見ていい理由にはならないっつーの!