「行くぞ」
タイミングを見計らったかの様にそう言った十夜が、あたしの手を引いて歩き出す。
抵抗しても無駄だということは経験上分かっていた。
だから、大人しく十夜の後ろを着いて行く。
あたしの後ろには煌。
その後ろには陽と陽を支えながら歩く彼方と壱さんがいた。
平静を装ってはいるけど、あたしの頭の中は大混乱で。
何でこんな事になったのか未だに理解出来ていない。
十夜達と再会してしまっただけでもあたしにとっては大問題なのに、その上十夜に送って貰うだなんてそんなの絶対に駄目だ。
「十夜、メット」
まともに会話をしないまま車に到着し、壱さんがトランクからヘルメットを取り出した。
それを十夜に手渡してトランクを閉める。
懐かしいな……。
一カ月前まで乗っていた車。
それを見るだけで車内での出来事が鮮明に思い出される。
皆と一緒に笑って喧嘩して暴走して。
毎日十夜の寝顔を見ていた。
今のあたしにとってこの車は切すぎる思い出。
「車の方がいいのか?」
ボーッと車を眺めていると、突然十夜がそう問いかけてきて慌てて首を振って否定した。
「……っ、いい。っていうか送って貰わなくても──」
慌ててそう返せば、「行くぞ」と右手を掬われて。
「ちょっ……!」
骨張った長い指が沿うように指に絡みついた。
……っ、ズルいよ……。
こんな状況にも関わらず、手を繋いだ事を喜んでいる馬鹿なあたし。
ホント、どうしようもない。


