「──送る」
「……え?ちょ……!」
想像もしていなかった言葉に驚く事しか出来なくて、されるがままに連れて行かれる。
「十夜!」
「煌、陽を乗せて先に帰れ」
「は?お前どう──」
「陽、バイクのキー貸せ」
十夜はあたしの言葉も煌の言葉も全て遮って、あたしの手を引いて陽の元へと歩いていく。
ちょ、ちょっと待って。
ちょっと待ってよ!
何でこんな事になってるの!?
十夜に送って貰うなんてそんな事……。
「壱、トランクにメット積んでるか?」
「え?うん」
あたしの心の叫びなんて知る由もない十夜は勝手に話を進め、困惑気味の陽からキーを受け取って再び歩き出す。
「十夜!ちょっと待てよ!!」
十夜があたしの腕を引いて踵を返した時、背後から陽に呼び止められた。
その声に歩き出そうとした十夜の足が止まり、あたしもつられて立ち止まる。
「何で!?何で送るんだよ!!十夜は凛音と離れてもいいのかよ!!」
振り返った先に見えたのは、陽の苦悶の表情。
もう何度見たか分からない表情。
「十夜!答えろ!!」
身体を少しだけ傾けながら歩いてくる陽の姿は見ていられない程痛々しくて。
今すぐ駆け寄りたい衝動に駆られた。
「十夜!!」
「陽!落ち着け!それについては後で話すから」
煌があたし達の間に割って入り、陽の身体を支える。
彼方と壱さんも近寄ってきて、陽の両サイドに回って肩を支えた。
それを見た煌は陽から手を離し、陽の耳元へと顔を近付ける。
「………っ、」
次の瞬間、陽の目が見開かれて、陽の口が真一文字に結ばれた。


