「陽が無事に帰れるって分かったから、あたし帰るね」
そう言って、返事も聞かずにその場から逃げる様に走り出す。
「凛音!!」
「……っオイ!!」
「りっちゃん!」
「凛音ちゃん!」
皮肉な事に公園の出入り口は一つしかなくて、皆の傍を通らなくては公園から出られない。
顔を見る勇気なんてないあたしは、ただひたすら地面だけ見ながら走った。
だけど、ある人の傍を走り抜けようとした時、振っていた右腕を掴まれて。
足がその場に縫い付けられる。
「凛音」
「……っ、」
直ぐ傍から聞こえる低音ボイスに足が震えて動かない。
……呼ばないで。呼ばないでよ。
その声で呼ばないで。
その声で呼ばれるとどうしたらいいのか分からなくなってしまう。感情のコントロールが出来なくなる。
「お前、一人で来たのか?」
「……え?」
「此処まで何で来た?」
「………」
一瞬十夜の言っている意味が分からなくて、俯いていた顔を上げた。
目が合った十夜はやっぱり無表情で、何を考えているのかさっぱり分からない。
「何で来た?」
「……タク、シー」
掴まれている手が微かに震えているのが分かる。
これだけ震えているのだから繋がっている十夜にも絶対気付かれている筈だ。
そう思うと何だか恥ずかしくなって、サッと顔を背けた。


