「お前は誰だ?陽は?」


まさか陽以外の人間が電話に出るとは思わず、車内に動揺が走る。




「陽は何処にいる?」


『………』


「陽に代われ」


『………』


「聞いてんのか?陽に代われ」


『………』



いくら喋りかけてもうんともすんとも言わない男に苛立ち、チッと舌打ちする。


向こうから電話して来たのに何故何も言わない?目的は何だ?

何故陽の携帯を持ってる?


何が、したい?



考えれば考える程相手の男に不信感が募っていく。



「お前、誰だ?」



十夜の威圧的な声が響いて、さらに車内の空気が張り詰められる。


姿が見えないとは言え、この威圧的な声を聞けば誰しもが白旗を上げるだろう。



顔を上げて十夜を見ると、十夜の体勢はさっきと変わらなくて。

けれど、視線だけはしっかりとスマホに向けられていた。


その視線は氷よりも冷たく感じる。

きっと十夜も陽の身を心配しているんだろう。




『──宮原 陽は怪我している。迎えに来い』


「は!?オ、オイ!それ……!」



──プツッ。


言い終わらぬ間に通話が途切れ、無機質な機械音が車内に響く。


相手の意図が全く掴めない内に一方的に遮断された通話。


いや、それはどうでもいい。

それよりも奴の言った事の方が気になる。



陽が怪我してる……だと?


何でそんな事になってんだよ。