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勢いで倉庫から飛び出したものの、陽が向かった駅までは結構距離があって、とてもじゃないけど走って行ける距離ではなかった。


止むを得ずタクシーに乗り、駅を目指す事に。


移動中、陽の事が気になって気になって。

早く着いて、と何度も何度も心の中で祈った。






駅前に着いた途端、落ち着かない気持ちに押される様にタクシーから飛び出して、地面を蹴る。


「お兄ちゃん!お釣りは!?」


『いいです!おじさんありがとう!』


お釣りなんてどうでもいい。

今は一分一秒という時間すら惜しい。



陽はきっとこの駅に来た筈だ。

あたしが妃奈を見送ったこの駅に。


まさか数時間もしない間に此処に来る事になるなんて思いもしなかった。



妃奈とお別れした駅を見上げて、ギリッと唇を噛み締める。


取り敢えず陽を捜さないと。


ぎゅっと強く拳を握り締めて、再び地面を蹴り上げる。


──けど。



『……っ、なんで居ないのっ!?』



駅を一周したけど、陽の姿は何処にも見当たらない。


陽どころかさっきの人達が言ってた“牧なんちゃら”っていう男達も見掛けなくて。


ボコるって言ってたから、もしかしたら何処かへ移動したのかもしれない。