「牧村達も懲りねぇよな~」


「アイツ、気に入らねぇ奴すぐボコるからなー」


「知らねぇ奴か。けど俺、あの金髪何処かで見た事ある様な気がすんだよなー」


「お前も?俺もそう思った」


「お前もかよ!じゃあお前、思い出せよ」


「お前こそ思い出せよ!って言うかこの辺で金髪小柄って誰かいたっけ?」


「あー、居そうで居ねぇよな。下っ端では……ってちょっと待てよ?いや、そんな訳ねぇよな」


「何だよ?誰か思い当たる奴いんのか?」


「いや、金髪小柄って言えばさ……、アイツを思い出した」


「アイツ?」


「そう、アイツ。隣の県の“アイツ等”」


「……アイツ等?……ってそうだ!アイツだ!さっきの金髪、アイツだよ!あの、“鳳皇”の!」



その“言葉”を聞いた瞬間、再び陽の顔が頭に浮かんだ。



……嘘、だよね?


陽が連れて行かれたなんて。



「ぅわっ!!」

「ビックリした!!」



突然トイレから飛び出してきたあたしに飛び上がって驚くメンバー達。


「え、ちょ、リン!?」


どうやら喋っていたのは顔見知りのメンバーだったみたいだけど、あたしの頭の中にはもう陽のことしかない。


慎と透にバレると色々聞かれそうだから、人気の少ない裏口から外に出る。



陽っ……!!


陽が何処へ連れて行かれたかも分からない。


けど、そんな事この時のあたしには関係なかった。


頭が真っ白になって何も考えれなくて。


慎達に何も言わずに飛び出して来てしまった事も、後々貴兄にバレるかもしれないという事も、あたしの頭からは綺麗さっぱり消え失せていた。