もう考えるのは止めよう。
陽とは逢わなかったんだ。
あたしが此処に来ない限り陽に逢う事はないだろうし、もしあたしが此処に居る時陽が来たとしても、きっとあたしに逢う前に門前払いされる。
それでいい。
もう関わらない方がいいんだ。
あたしの為にも陽の為にも。
逢えばツラくなるだけだから。
「──リン」
不意に声を掛けられて、ピクッと肩が飛び跳ねる。
『貴兄……』
振り向けば、貴兄は二階から下りて来る途中で。
後ろには、優音と慧くん。そして、透が居た。
「リン」
あたしの名前を呼ぶ貴兄の表情は分かれる前と少しも変わらず穏やかで。
陽の事を聞かなかったのかと疑問に思う。
けど、そんな筈はないと直ぐに思い直した。
あたしと目を合わせようとしない透を見て気付いたから。
貴兄はあたしが“陽が此処に来た”事を知らないと思ってるんだ。
多分、透は貴兄に『慎一郎に口止めしときました』とでも言ってるんだろう。
それなら──
『貴兄、どうしたの?』
あたしも、知らないフリをしよう。


