『ありがと。その時はよろしく』
これ以上言っても埒があかないような気がして、取り敢えずそう答えておいた。
すると、突然「うーん…」と唸り出した慎。
『なに?』
「いや、あながち冗談じゃねぇかもな」
『え?』
それって、どういう意味?
「いや、な。あの男に『リンは此処には滅多に来ねぇ。今は◯◯駅に行ってるみてぇだけど』って言ったんだよ。そしたら言い終わる前にいきなり走って行きやがってさ。
あの慌てようにはビックリしたわ。
けど、お前の話聞いて分かった。アイツよっぽどお前に仕返ししてぇんだな」
『……っ』
「ってか、駅でそれらしき男から声掛けられなかったんだろ?っていう事は、もしかしたらまた来るかもしんねぇな」
『………』
「まぁまぁ!そこまで落ち込むなって!次来たら俺が追い返してやるって言ってんだろ!?」
『……うん』
バシバシとあたしの背中を勢いよく叩く慎に取り敢えずそう返事したものの、あたしはそれどころじゃなかった。
……陽はあたしと逢ってどうしたいの?
あたしは陽を沢山傷付けたんだよ?
それでも逢いに来てくれるの?
嬉しくないと言えば嘘になる。
あれだけ傷付けたのにまだ逢いに来てくれるという事が堪らなく嬉しい。
でも、逢ったところでどんな顔をすればいいのか分からないし、どう接すればいいのかも分からない。
だって、今のあたし達は何十にも重なった“敵対関係”という壁があるから。


