「遅くなってごめんね!」


車に駆け込んで座席に深く身を沈ませると、待ってくれてた皆に手を合わせ、頭を下げた。


何だかんだで妃奈を見送るのに15分程かかってしまった。


わざわざ送ってくれたのにそんなに待たせてしまったなんて本当に申し訳ない。


「大丈夫だよ。ホント仲良いんだね」


まるであたしと妃奈のやり取りを全て見ていたかの様にそう言った慧くんは、クスッと意味深な笑みを零した後、慣れた手付きで車を発進させた。






「あ、そうだ!」


ふぅ、と座席に凭れた時、妃奈に言われた事を思い出して再び身体を起こす。


「ねぇねぇ、貴兄!」

「ん?」


呼び掛ける前からあたしを見ていたのか、貴兄に目を向けた時にはもういつもの優しい笑顔が浮かべられていて、その笑顔に心がほっこり温かくなった。


「あのね、妃奈がありがとうって言ってた!楽しかったって」


「そうか。なら良かった」


穏やかな笑顔であたしの頭を撫でる貴兄。

その優しい手付きに自然と笑みが零れる。


「優と慧くんにもありがとうって言ってたよ!」


あと、嵐ちゃんと時人くんと遊大も、と付け足す。


「また連れて来いよ」


そう言った優音が横目でチラリ、あたしを見てきた。


一見無表情に見えるその表情。


けど、頬が赤らんでいる様に見えるのはあたしの気のせいじゃないと思う。


にやり、口角が緩やかに弧を描く。


ふふっ。分かってる。分かってるよ優音くん。



「是非連れて来るとも!」


お姉ちゃんは弟の期待を裏切らないからね!


気合いを入れるように握り拳を作るあたし。


そんなあたしを見て、優音くんは怪訝な顔をしている。


もー、照れるなよ!