「………」


無言は肯定と同じ意味。


オイオイオイ。マジかよ。


まさか十夜まで行くと言い出すとは思わなくて、目頭を押さえて俯いた。



「お前、本気で言ってんのかよ?話し合いせずに乗り込もうっていうのか?」

「………」

「行ってどうする気だよ!」



俺達はまだ何も話し合っていない。


お前がどう考えているのか、凛音の事をどう思っているのか、俺には分からない。


分からないままじゃどうする事も出来ないんだよ……!




「十夜」


壱がテーブルの上に置いてある車の鍵を手に取り、ソファーから立ち上がる。


「壱!?」


「陽を迎えに行く。アイツを放っておけない」


十夜は横目で俺を見下ろすと、言い終わらぬ間に再び歩き出した。


その後ろを着いて行く壱。


二人が玄関に向かうのを目で追いかけていると、彼方がチラリ、俺に目を向けた。


その視線に気付いた俺は彼方と目を合わせ、「仕方ねぇな」と一言呟いて溜め息を洩らす。


そんな俺を見て彼方は小さく苦笑していたけど、俺は笑えねぇよ、と心の中で呟いて煙草をポケットに入れた。



あー、どうすんだよこれ。

計画性全くねぇじゃねぇか。


陽が心配なのも分かる。


獅鷹じゃなきゃ俺も何も考えずに行こうと思う。


けど、相手はあの獅鷹だ。


アイツ等は此処ら辺のヘボい族とは格が違う。


考え無しに乗り込んで倒せる相手じゃないんだ。


それに、“倒せる”訳がない。


凛音がいる以上、アイツ等に手を出す訳にはいかないんだ。


十夜、それがあるから今日、話し合いをするって決めたんじゃねぇのかよ。