「陽、答えろ。今何処だ」


一人だけいつもと変わらない口調なのは十夜。


何故か妙に落ち着いている。


チラリと十夜を見れば、さっきの口調とは逆にその表情はこの中の誰よりも険しい。



『……今、獅鷹の溜まり場の前。凛音に会ったらすぐ帰る』


「は!?」



予想外の言葉に更に身を乗り出す。



「オイ、陽……!!」


『分かってるよ。……会ったらすぐ帰るから』


「陽!!」



牽制する様に名前を呼んだが間に合わず、ツーツーツーと無機質な電子音だけが虚しく室内に響き渡った。


その音は通話が終了した事を意味していて。


「有り得ねぇ……」


陽の予想外の行動に最早頭を抱える事しか出来なかった。


ちょっと待てよ。

何がどうなってんのかさっぱり分かんねぇ。


陽が獅鷹の所に行ってるだと?


マジかよ。笑えねぇ。




「………」


……あぁークソ!どうすりゃいいんだ!!


そう、心の中で叫んだ時だった。



「行くぞ」



十夜がソファーから立ち上がった。


それを見て嫌な予感が頭を過る。



ちょっと待てよ。


まさか──



「お前、獅鷹んとこに行くって言うのか!?」



十夜の思いもよらない行動に声を荒げた俺。