凛音が去った後、陽は糸が切れた様に道路へと崩れ落ちた。
堪えていたであろう涙を惜しげもなく流し、凛音の名を呼び続ける。
嗚咽を上げて泣く陽に、俺達は何も言葉をかけてやれなかった。
かける代わりにそっと陽の肩に手を乗せると、触るなとでも言うように思いっきり振り払われ、顔を逸らされる。
それは、陽が初めて俺を拒絶した瞬間だった。
『陽、帰るぞ』
それでも俺はもう一度陽に手を伸ばし、小刻みに震えている左腕を強く掴んで引き上げる。
怖くなかったかと言えば嘘になる。
初めて見せた陽の拒絶に心が痛まない訳がなかった。
けれど、痛む心より陽が泣いている方が何倍も痛かったから。
俺達四人にとって陽は仲間である以上に可愛い弟で、どれだけ嫌われようがこのまま放っておく事なんて出来なかった。
腕を引き寄せ立つ様促すと、抵抗せず素直に立ち上がった陽。
と言うより、抵抗する力が無かったのだろう。
陽が歩き出そうとすると、十夜がおもむろに陽へと近付いていき、そっと陽の後頭部に手を回して自分の方へと引き寄せた。
『……っ』
陽が十夜の胸に留まったのはほんの一瞬で。
十夜は特に何を言うわけでもなく、直ぐに手を離して歩き出す。
けど、陽にはそれだけで十分伝わったのだろう。
再び頬に伝う涙。
陽は涙を手の甲で拭い、十夜の後ろを重い足取りでついていく。
そんな陽を壱が支えながら歩き、彼方も陽の頭を優しく撫でながら歩いていった。
俺は四人の後ろ姿を突っ立ったまま見つめ、ポツリと零す。
『何でこうなった』
俺の言葉は誰に聞かれる事もなく闇夜へと溶けていった。
あの時の絶望感は、とてもじゃないけど言葉では言い表せない。


