Ri.Night Ⅲ


凛音が去った後、陽は糸が切れた様に道路へと崩れ落ちた。


堪えていたであろう涙を惜しげもなく流し、凛音の名を呼び続ける。


嗚咽を上げて泣く陽に、俺達は何も言葉をかけてやれなかった。


かける代わりにそっと陽の肩に手を乗せると、触るなとでも言うように思いっきり振り払われ、顔を逸らされる。


それは、陽が初めて俺を拒絶した瞬間だった。




『陽、帰るぞ』


それでも俺はもう一度陽に手を伸ばし、小刻みに震えている左腕を強く掴んで引き上げる。


怖くなかったかと言えば嘘になる。


初めて見せた陽の拒絶に心が痛まない訳がなかった。


けれど、痛む心より陽が泣いている方が何倍も痛かったから。


俺達四人にとって陽は仲間である以上に可愛い弟で、どれだけ嫌われようがこのまま放っておく事なんて出来なかった。




腕を引き寄せ立つ様促すと、抵抗せず素直に立ち上がった陽。


と言うより、抵抗する力が無かったのだろう。


陽が歩き出そうとすると、十夜がおもむろに陽へと近付いていき、そっと陽の後頭部に手を回して自分の方へと引き寄せた。



『……っ』


陽が十夜の胸に留まったのはほんの一瞬で。


十夜は特に何を言うわけでもなく、直ぐに手を離して歩き出す。


けど、陽にはそれだけで十分伝わったのだろう。


再び頬に伝う涙。


陽は涙を手の甲で拭い、十夜の後ろを重い足取りでついていく。


そんな陽を壱が支えながら歩き、彼方も陽の頭を優しく撫でながら歩いていった。



俺は四人の後ろ姿を突っ立ったまま見つめ、ポツリと零す。



『何でこうなった』



俺の言葉は誰に聞かれる事もなく闇夜へと溶けていった。


あの時の絶望感は、とてもじゃないけど言葉では言い表せない。