もう一つ。
俺を、いや、俺達を踏み留まらせていたのはアイツの瞳。
凛音を絶対連れて行かせないという本気の瞳。
その瞳からは凛音を連れて行かせない為なら何でもするという決意が感じ取れた。
無理矢理凛音を連れて行こうもんなら、必ず喧嘩が生じる。
話し合いでは解決しない。
あの瞳を見てそう悟った。
けど、アイツがどんなに俺達を威嚇しようと、俺達はアイツが凛音の兄貴と分かった時点で喧嘩をする気は無かった。
凛音が見ている前でなんて出来ない。
あの悲痛の叫びを聞いた後になんて出来る訳がない。
だから。
俺達は何も言えないまま、どうする事も出来ないまま、アイツ等と一緒に去っていく凛音の背中をただ見つめている事しか出来なかった。
どうしようもない歯痒い想いを、凛音へぶつける事なんて出来なかった。
けど“あの時”、俺達が胸に留めていた想いを陽が代わりに吐き出した。
獅鷹と鳳皇が喧嘩をしたら凛音が哀しむ。
それは陽にも分かっていた筈だ。
それでも陽は、凛音と離れたくないという想いの方が強かったのだろう。
凛音の名を叫び、必死に呼び止めた。
涙で潤んだその瞳で、俺達にも凛音を止めろと訴えてきた。
けど、俺達四人はそれに応えなかった。
いや、応えられなかった。
あの時は、ああするしかないと思ってたんだ。
アイツを引き止める方法が思い付かなかった。
どうしたらいいのか分からなかった。


