俺だって、出来る事ならアイツを引き止めたかった。
確かにアイツの言葉は俺達に衝撃を与えた。
けど、俺はアイツが獅鷹総長の妹だったと知っても、俺達にずっと黙っていたと知っても、不思議と裏切られたとは思わなかった。
“あの時”の凛音の言葉、表情。
必死に涙を堪えているアイツの表情が脳裏に焼き付いて離れない。
アイツは車内で告げた『十夜が獅鷹に行っている』という言葉を、どんな気持ちで聞いていた?
繁華街で獅鷹総長と副総長を睨み付けている俺達を見て、アイツはどんな気持ちだった?
俺に「鳳皇を抜ける」と告げた時、アイツはどんな気持ちでその言葉を発した?
鳳皇に留まる事を決めたアイツはどんな気持ちで俺達と過ごしていた?
夏祭りの時、睨み合う俺達を見てアイツはそれをどんな気持ちで見ていた?
兄弟と去っていく時、アイツはどんな気持ちで去って行った?
過去を振り返れば振り返る程、“後悔”という念が俺の心を蝕み、苦しめる。
何故気付かなかった。
何故気付いてやれなかった。
思い返せば、アイツの様子がおかしいと思った事は沢山あった筈なのに。


