「──もしもし」


「……っ」


突然鳴り出した着信音に身体がビクッと過剰に反応した。


それを誤魔化す様に身体を少し動かし、深く座り直す。


鳴ったのは貴兄の携帯電話。


音楽すら鳴っていない静かな車内に、貴兄の低音ボイスが響き渡る。


総長モードの声はいつもより少しだけ低く、妙に色気があるように聞こえる。



……実はあたし、この声結構好きなんだよね。

スッと耳に入ってきて馴染んでいく感じが凄く心地好い。



「……あぁ、分かった。今からリンの友達をF駅に送っていく。その後一件寄ってから倉庫に向かう。……あ?あぁ、分かった、連れていく」


静かな車内では嫌でも内容が耳に入ってくる。


今の内容から推測すると、この後倉庫に行く事は間違いない。


っていうか今、貴兄の視線が一瞬こっちへ向いたような?



「貴兄?」


首を傾げて問いかけると貴兄がパタンと携帯を閉じてあたしを見た。


「凛音、聞いてたと思うけど、この後緊急の用が入った」


「え?うん」


貴兄は喋りながら身体をドアの方へと寄せると、ドアと背凭れの丁度中間に凭れ掛かる。