「……オイ。お前、顔ヤベェぞ?」


し、しまった。また顔が緩んでたのか。


いつの間にかバイクに跨がっていた嵐ちゃんが、頭大丈夫か?とでも言いたそうな顔であたしを見ていて。


冷ややかな視線がブスブス突き刺さって痛い。


『さ、さー出発しようか!優音!準備はオーケー!?』


その視線に耐えきれなくて、誤魔化す様に無理矢理優音に振った。


すると、優音は今のやり取りを見ていたのか、それともその前からあたしの緩みきった顔を見ていたのかどちらかは分からないけど、あたしを見る表情は明らかに呆れていた。


その表情を見て更に誤魔化す様にヘラッと笑い、もう一度『オーケー!?』と聞き直す。


あたしを見てクスクス笑う妃奈。「オーケー」と素っ気なく返す優音。


温度差があるのは気のせいという事にしておこう。



優音は一度エンジンを大きく噴かすと、嵐ちゃんに目配せをしてゆっくりとバイクを発進させる。


『レッツゴー!』


こうして、妃奈との長いようで短いデートは無事幕を下ろした。