「お腹空いて機嫌悪くなるって子供じゃあるまいし」


「オイ、聞こえてんぞ」


「……ん?」


「悪かったな、子供で」


「い、いやいやいや!滅相もございません!優音様は立派な大人でごじゃいましゅる」


あ。


「噛んでんじゃねぇよ」



最後思いっきり噛んだあたしに、優音が指差しながら馬鹿にしてくる。



「い、いいじゃない別に!そんなに笑うんなら優音になまこ汁あげないからね!」


優音をキッと睨み付けて、優音の分のなまこ汁をサッと自分の方へ引く。


「あ?それは駄目!俺なまこ汁楽しみにしてたんだからな!」


椅子から立ち上がった優音が口を尖らせながらあたしに手を伸ばしてきたけど、更に手前に引き寄せて回避。


危ない危ない。取られる所だった。




「……なぁ、お前等さっきから“なまこ汁”って何の話してんの?」


「……ん?」


不思議そうな顔であたし達を見ている貴兄に、キョトンとするたしと優音。


「何ってなまこ汁」


持っていたお碗をズイッと貴兄に差し出して、指を差す。


「は?それ、なまこ汁じゃなくてなめこ汁なんだけど」


「は?」

「は?」


「いや、だから、なめこ汁だよ」


「え?なめこ汁?なまこ汁じゃないの?」



お碗の中のなまこ、いや、なめこ?を見て聞き返す。


「お前、味噌汁の中になまこって気持ち悪い事言うなよ」



お味噌汁を見ながら思いっきり顔を顰める貴兄にあたしも顔を顰めて、「だって優音がなまこ汁って言ったんだもん!」とキッチンに戻っていく貴兄にそう叫ぶ。