『嵐ちゃん!!』


ちょっと、無視!?


大声で呼んでいるのに一向にこっちを向こうとしない嵐ちゃんは、どうやらあたしの声が聞こえないぐらい飲み物を選ぶのに集中してるらしい。


ちょっと。どれだけ真剣に選んでんのよ。


ブツブツ呟きながら物色している嵐ちゃんを見て、最早怒りを通り越して溜め息しか出ない。


ったく!



『富士山!!アンタの飲み物はこれでしょうが!!』


ドスドスドスとわざと足音を響かせて近付くと、嵐ちゃんの目の前にあるコーラを荒々しく手に取って、ズイッと顔に近付けてやる。


すると。



「うおっ!ビックリした!……ってリン!?お前こんなとこで何してんだ?」

『……はぁ』


予想通りというか何と言うか、コントの様に目を真ん丸に見開いて大袈裟に驚く富士山に二度目の溜め息が出た。


『そりゃこっちの台詞だよ。嵐ちゃんこそこんなとこで何してんの?』


そんな化け物を見るみたいな目で見られたくないんだけど。



「何ってお前等を迎えに来たんだよ。そのついでに飲みモン買いに来ただけ」


『えっ。嵐ちゃんが迎えに来てくれたの?貴兄は?』


「テメェ、嫌そうな顔すんじゃねぇよ!貴音は慧と一緒に倉庫へ行ったんだよ!」


『……なぁんだ、そうなの?てっきり俺は妃奈に会いたいから無理矢理来たんだと思った』


「………」


『……何、その顔。もしかして図星とか言わないよね?』



笑顔のままスーッと視線を泳がせる嵐ちゃんをギロリと横目で睨み付ける。