もしかして……。


そう思った時、壁に手を付いていた男が少しだけ動いた。


それによって見えたのは、俯いている妃奈の姿。


やっぱり!思った通りだ!


ギリッと唇を噛んで、その場から駆け出す。

向かうのは、当然妃奈の元。



やっぱりこの姿で来て正解だった。


女二人で繁華街歩いていたら絡まれやすいって分かってたからね。


妃奈みたいな可愛い子は特に狙われやすいし。


リンの姿で来たら絡まれないと思ってたけど、まさか待ち合わせ前にナンパされるなんて。


妃奈、ごめんね。



『──なぁ。誰の女に手出してんの?』



すぐ助けてあげるから。




「あぁ゙?」


妃奈の前に居た男の肩をグイっと引くと、肩越しに振り返ってきた男。

隣の男も同時に振り返り、鬼の様な形相で凄んでくる。


その表情は女に向けるものではなく、明らかに男に対してのもので。


まぁ、それは仕方ないんだけど。

あたし、今“リン”だから。



『その子、俺のなんだけど。離してくれない?』


「………っ」


スッと目を細めて睨むと、一瞬歪んで見せた男。



『その手、離せよ』


「……チッ。オイ、コラ、チビ。テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ?」



追い打ちをかける様に睨みを利かせれば、男は妃奈の前から退いてあたしに向き直った。


……っていうか、アンタもチビじゃん。